数年前の秋のことですが、シャンプーをした後に排水溝に溜まる髪の毛の量を見て、私は心臓が凍りつくような感覚を覚えました。それまでは自分の髪に自信があったわけではありませんが、まさか自分が脱毛症という壁にぶつかるとは夢にも思っていなかったのです。朝、鏡の前でヘアセットをしようとしても、以前なら簡単に隠せていた分け目がどうしても目立ち、指先で髪をかき上げるたびにハラハラと落ちる毛に絶望を感じる毎日が始まりました。友人と会うのも億劫になり、電車の座席に座っている時に周囲からの視線が頭頂部に注がれているのではないかと被害妄想に陥るほど、私の心は疲弊していました。市販の育毛剤を片っ端から試し、高価なシャンプーに変えてみましたが、期待したほどの効果はすぐには現れず、焦りだけが募っていきました。そんな私を救ってくれたのは、同じ悩みを持つ女性たちが集まるオンラインのコミュニティでした。そこには、ウィッグを活用してファッションを楽しんでいる人や、勇気を出してクリニックに通い、治療を続けている人たちのリアルな声が溢れていました。私はそこで初めて、髪を失うことは自分自身の価値を失うことではないという当たり前の事実に気づかされたのです。意を決して専門のカウンセリングを予約し、自分の現状を客観的な数値として突きつけられた時はショックでしたが、同時に「これから何をすべきか」という具体的な道筋が見えたことで、霧が晴れるような感覚を覚えました。医師のアドバイスに従い、食生活を見直し、サプリメントを取り入れ、自分を追い詰めるような完璧主義を捨てることに決めました。今でも髪が完全に元通りになったわけではありませんが、今の自分を受け入れ、工夫しながら日々を楽しむ余裕が生まれました。髪の変化は確かに悲しい出来事でしたが、それをきっかけに自分の心と身体をいたわる大切さを学べたことは、私にとって大きな財産となりました。もし今、かつての私のように鏡の前で立ち尽くしている方がいるなら、まずは自分を責めるのをやめて、小さな一歩を踏み出してほしいと心から願っています。