AGA治療薬の副作用について調べていると、「ポストフィナステリド症候群(PFS)」という、聞き慣れない、そして少し不安を煽るような言葉に、遭遇することがあります。これは、フィナステリド(またはデュタステリド)の服用を「中止した後」にもかかわらず、性欲減退や、勃起機能不全(ED)、うつ症状、記憶力の低下といった、様々な副作用が、長期間にわたって持続してしまう、とされる状態のことを指します。PFSは、まだ医学的に完全に解明されているわけではなく、その存在自体を疑問視する声も少なくありません。世界保健機関(WHO)などの公的な機関では、まだ正式な疾患として認定されてはいません。しかし、インターネット上では、PFSの症状に苦しんでいると訴える、世界中の男性たちの声が、数多く見られます。彼らの主張によれば、薬をやめたにもかかわらず、何ヶ月、あるいは何年もの間、生活の質を著しく低下させる、深刻な心身の不調が続いている、というのです。なぜ、このような現象が起こるのか、そのメカニズムは、まだはっきりとは分かっていません。フィナステリドが、男性ホルモンのバランスを変化させることで、脳内の神経伝達物質の働きに、何らかの不可逆的な影響を与えてしまうのではないか、という仮説や、あるいは、薬の副作用に対する強い不安感や、罪悪感といった、純粋な「心理的な要因(心因性)」が、症状を引き起こし、持続させているのではないか、という説もあります。重要なのは、PFSは、現時点では、その発生頻度も、原因も、治療法も、確立されていない、非常に稀で、かつ不確かな状態である、ということです。AGA治療を検討する上で、このような症候群の存在が報告されている、という事実は、知識として知っておくべきです。しかし、それを過度に恐れるあまり、科学的根拠に基づいた、有効な治療を受ける機会を、自ら放棄してしまうのは、賢明な判断とは言えません。信頼できる医師と、副作用のリスクについて、十分に話し合い、納得した上で、治療を開始すること。それが、最も重要な心構えです。
ポストフィナステリド症候群とは何か